健康保険

June 05, 2006

傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給期間は、同一傷病について、支給を開始した日から起算して1年6か月までです。

これは、継続支給はもちろんですが、間に労務可能期間があり支給が一時中断しても、支給開始日から1年6か月経った時点で終了となります。

同一傷病とは、その傷病が「治癒」するまでをいいますが、健康保険法では、「治癒」の認定方法が、医学的判断とは異なり、「社会通念上の治癒」という考え方を採用しています。これを「社会的治癒」といいます。

<社会的治癒とは?>

過去の傷病が医学的には治癒していないと認められる場合であっても、次の条件のすべてに該当した場合は、「社会的治癒」が認められ、再び発症(再発)したものとして取り扱われます。

しかし、次の一部でも当てはまらないときは治癒したとは認められずその傷病が続いているものとして取り扱われます。

1.症状が固定し、医療を行う必要がなくなったこと。
2.長期にわたり自覚的にも、他覚的にも病変や異常がみとめられないこと。
3.一定期間、普通に就労していること。

「社会的治癒」が認められた場合は、前傷病に対する傷病手当金の継続ではなく、(例え病名が同一であっても)新たな傷病での労務不能とみなして、新たに傷病手当金の支給が開始されます。

<傷病手当金支給中に他の傷病が発生した場合は?>

複数の別の傷病が重なった場合、傷病手当金の支給期間は各々別個に計算されます。重複した期間は、一つの傷病手当金という形で合わせて支給され、支給額は標準報酬月額の100分の60が支給されます。

よって、最初の傷病の起算日は労務に服することが出来ない状態であった連続する3日間の「待期」後、実際に支給が開始となった日が最初の傷病の起算日となり、これより1年6か月までが支給対象の期間となります。

また、次の傷病についても同様で、労務不能の状態であると社会保険事務所が認めた場合、連続する3日間の「待期」後、実際に支給が開始となった日が次の傷病の起算日となり、これより1年6か月までが支給対象の期間となります。

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September 22, 2005

傷病手当金の支給要件

健康保険では、被保険者が私傷病の療養のため仕事につけなくなった場合(「労務不能」といいます。)最初の3日を除き(これを「待期」といいます。)4日目から傷病手当金が支給されます。支給期間は、支給を開始した日から数えて1年6か月です。

「療養のため」とは、保険診療を受けている場合だけではなく、自費で診療を受けている場合や自宅療養の場合も該当します。

「労務不能」とは、症状など客観的にみて仕事に就けない状態にあり、しかも現実に仕事に就かなかったことをいいます。

労務不能であるかどうかは、その人が従事している業務の内容や種別などを考慮して、その本体の業務に就けるかどうかを基準として判断されることになります。

したがって、軽い業務ならばできる状態であっても、本来の業務につけない状態であれば、労務不能ということになります。

しかし、労務不能と認められるためには、現実に仕事に就かなかったことが必要となりますから、実際に軽い業務に就いてしまうと、その日は労務不能とは認められなくなってしまいます。

【待期3日間】

この場合の3日間は、労災保険の休業補償給付・休業給付とは異なり、通算して3日間ではなく、連続して3日間となっています。待期の間に所定休日があっても、休んだ日について年次有給休暇を行使しても、待期は完成します。

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September 01, 2005

退職後の医療保険はどうする?

退職後の医療保険を、健康保険の任意継続とするか、それとも国民健康保険への加入とするかは悩むところです。

退職した人の医療保険については、再就職して被保険者資格を取得したり、被扶養者になる場合を除けば、在職中の健康保険の任意継続被保険者となるか、新たに国民健康保険に加入するかのどちらかを選択することになります。

健康保険の任意継続被保険者になるには、被保険者資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上被保険者であったことが必要で、資格喪失後20日以内に継続のための手続をとらなければなりません。もし、この条件を満たしていなければ、必然的に国民健康保険に加入することになります。

任意継続か国民健康保険への加入のどちらが有利であるかは、一概には言えません。

かつては健保の本人負担が2割だったことから、給付面で任意継続が有利なケースが多かったのですが、現在はいずれも3割負担で他の給付内容もほとんど同じです。

したがって、負担する保険料の額が選択の決め手となる場合が多いようです。

任意継続の保険料は、全額を被保険者が負担しなければなりませんから、在職中の負担額の2倍相当額です。ただし,標準報酬月額が所属する保険グループの平均額(政管健保の場合は28万円)を超える場合には、その平均額を基準に保険料額が計算されます。

一方、国民健康保険の保険料は、住んでいる市町村によって額が異なります。前年度の所得を基に、所得割率・均等割・平等割・資産割等によって決定されます。決定方法は、各市町村によって異なります。

所得割: その世帯の前年所得に応じて算定
均等割: 加入者一人当たりいくらとして算定
平等割: 一世帯当たりいくらとして算定
資産割: その世帯の資産(固定資産)に応じて算定

<例>:世田谷区の国民健康保険料

以上のようなことから、国保に加入した場合の保険料を調べてみた上で、どちらが得か比較検討されることをオススメします。

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August 15, 2005

「使用人兼務役員」の保険料計算

7月23日に「使用人兼務役員」とは?という記事を掲載しましたら、下記のような質問が来ました。

【質問】
給与月額50万、役員報酬月額10万の使用人兼務役員の健保資格取得を行うところです。

このとき、標準報酬月額の対象となる報酬は、給与と役員報酬を合算した60万になるのでしょうか。
これまでは給与のみが標準報酬月額の対象となるのだとと考えておりました。

【回答】
この場合は、給与50万円+役員報酬10万円=60万円になりますので、標準報酬月額は59万円になります。

労働保険と社会保険とでは保険料の計算方法が異なります。

労働保険は労働者の保険ですから、労働者としての賃金部分に対して保険料がかかりますし、給付も賃金部分で計算されます。
つまり、この人の場合は給与50万円で計算されます。

社会保険は労働者だけでなく経営者(役員)も対象になりますので、標準報酬月額を決める際には、賃金だけでなく役員報酬も含みます。

つまり、労働保険=労働者の保険=賃金のみ
社会保険=労働者+役員の保険=賃金+役員報酬
となるのです。

この違いには気をつけてください

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July 18, 2005

胸部X線検査、健康診断で廃止検討

毎日新聞(7/17)によると、職場の健康診断で実施されている胸のエックス線検査について、厚生労働省は法的義務付け廃止の検討に入ったそうです。理由は検査の有効性を示す証拠がないため。すでに専門家による検討会を設置しており、結論次第で来年度にも廃止するもよう。

検討会では矢野栄二委員が、職場健診での肺がんの発見率は低く見落としが多い▽他の病気も検査以前に症状が出るなどで健診で探す意義は薄い▽エックス線被ばくの影響で発がんする人が延べ数万回から10万回の受診に1人出ると推計される――と指摘。利益と危険のバランスを考え、義務を廃して特に必要な人だけを検査すべきだと主張しています。

一方、連合会副会長の柚木孝士委員は、検討会に出した資料で「(個々の病気の発見法としては)優れた検査法とする根拠は乏しい」と認めながら「有効性が低いとする根拠は確立されていない」と存続を訴えています。

職場健診の費用は全国で年間3000億円から4000億円と推定され、連合会の専務理事は「廃止は健診料金の大幅値下げや受診者の急減につながりかねず、死活問題だ」と言っています。

厚労省の課長は「従来は、とにかく検査するのは良いことだとやってきたが、今は有効性の証拠が求められる時代だ」と話しています。

※【エックス線検査】
労働安全衛生法の規則が定める職場健診の1項目。同法は72年の施行以来、事業者に対し年1回の実施、労働者には受診を義務付けており、罰則もある。受診対象者は現在、約5900万人に上る。
結核予防法も年1回の検査を義務付けていたが今年4月に義務は廃止。見つかる結核患者が受診者1万人に1人未満と少なく、発見の利益よりエックス線被ばくの害が心配されるため。

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July 14, 2005

算定基礎月に途中入社した場合の標準報酬月額の決定

通達(昭和37年6月28日保険発第71号)から抜粋

(疑義七) 
次の設例の場合、定時決定に際しては、保険者において算定する場合として取り扱い十月以降において受けるべき報酬月額(標準報酬等級第一八級月額三万円)で決定して差し支えないか。
もし保険者算定を行なわないとすれば、取得時においては標準報酬等級第一八級で決定され、定時決定においては、報酬月額二万五〇〇〇円(六、七月の二か月の報酬の算術平均額)、標準報酬等級第一六級で決定することになる。

(設例)
六月十一日資格取得 月給三万円
六月分給与 二万円(二〇日分の日割計算)
七月分給与 三万円

(回答) 
設例の場合、お見込みのとおり標準報酬等級第十八級三万円で決定して差し支えない。

<現在の内容で説明すると>

5月8日に資格を取得し、報酬月額を30万円で届け出たが、5月分給料は日割りで計算されたため、24日分として24万円の支払いがあった。
6月分はふつうに支給されたので、5月分24万円、6月分30万円の平均額で決定(標準報酬月額28万円)することにした。
この方法は誤りです(本来受ける給料ではない)。

<正しい取扱い>
5月・6月ともに支払基礎日数は20日以上ありますが、5月においては月の中途採用であり、その日割りによる報酬であって本来受ける額ではありません。
したがって、このような場合には、9月以降受けるべき報酬月額を保険者において算定することになりますので、標準報酬月額30万円で決定します。

【まとめ】
算定基礎月は、その事業所に継続して雇用されていた期間が対象となりますので、支払基礎日数が20日以上あっても給与支払期間の途中に入社した場合は、その月は対象となりません。5月の支払基礎日数が24日でも5月を除いた6月のみで算定します。

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July 12, 2005

算定基礎期間の残業代どうすれば減らせる?

社会保険算定期間(4月から6月)が繁忙期にあたり、標準報酬月額が年平均の給与に比べて高めになってしまうとお悩みの経営者、従業員も多いと思います。

だからと言って、残業代を含めなくて良いと言う訳にはいきません。

そこで、もし毎年4月から6月に規則的に繁忙期となり残業時間が多くなるのであれば、「1年単位の変形労働時間制」を採用してみてはいかがでしょうか?

●「1年単位の変形労働時間制」とは
あらかじめ設定した1年以内の一定期間の平均所定労働時間が週40時間以内になる範囲内で、所定労働時間を変動させることができる制度です。

【変形期間を6カ月間とした場合】

繁忙期の3カ月間の週所定労働時間を46時間
それ以外の3カ月間の 週所定労働時間を34時間
変形期間の6カ月間の週平均所定労働時間は40時間

所定労働時間に対しては時間外手当(残業代)の支給は必要ありませんから、繁忙期の給与だけ高くなるということがなくなります。従って標準報酬も平均的な額で決定することができます。

また社会保険料のみならず、「1年単位の変形労働時間制」の導入により、支払残業総額を抑えることができます。

※【社会保険定時決定】

健康保険・厚生年金保険の保険料は標準報酬により決定します。この標準報酬額は、年1回、4・5・6月の残業代等を含む支払い賃金額を基に算定を行い、その年の9月から翌年の8月までの標準報酬が決まります。これを定時決定といいます。

標準報酬はその後、固定的賃金の変動があり、さらに2等級以上の変動がない限り改定されませんので、基本給等の固定的賃金は変わらず、残業代が少ない月が続いただけでは改定されません。つまり、算定基礎期間(4~6月)に残業が多い会社は年間の平均賃金よりも標準報酬月額の方が高くなり、保険料負担が増大してしまうこともあるのです。

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July 06, 2005

長期入院の食費・居住費、自己負担に

厚生労働省は、長期入院している人の食費や居住費を公的医療保険の給付対象からはずし、患者に自己負担を求める方針を固めました。来年の通常国会に提出予定の医療制度改革関連法案に盛り込み、06年10月からの実施を目指す予定。今年10月から介護保険で施設入所者に食住費の負担を求めるのに合わせるもので、医療費抑制の狙いもあります。

自己負担を求めるのは、慢性的な病状で長期入院が必要な人の療養病床の入院患者で、老人保健制度(現在は72歳以上)によって自己負担が原則1割となっている高齢者とする案を軸に検討しています。

介護保険でみる療養病床は、今国会で成立した改正介護保険法により、10月以降、食費と居住費が自己負担になります。厚労省の試算では、最も重い要介護度5の場合、個室かどうかや所得により、月1万~10.8万円が自己負担になります。

一方、医療保険の療養病床は、食費と居住費のほとんどは保険でまかなわれており、患者の負担はかかった医療費の3割、老健制度対象の高齢者は原則1割。

このため、給付を受けるのが医療保険か介護保険かで同じような療養病床の入院患者間で格差が生じることになり、今後、医療保険側に利用者が移る可能性もあることから、厚労省は医療保険でも食住費の自己負担が必要と判断。

自己負担額は介護保険と同程度になる見込み。ただ、治療の必要度は病気によって異なるため、厚労省は難病患者や「医療食」を受けながら治療を受けている人たちは対象からはずす方向。
(朝日新聞)

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June 08, 2005

75歳以上の医療制度改革案

日本医師会は7日、75歳以上を対象に新たに独立した高齢者医療保険制度を創設する医療制度改革案を公表しました。(共同通信)

【75歳以上の財源改革案】
患者の自己負担1割
保険料1割
残りは公費(税金)と現役世代の負担で賄う
健康保険組合などからの拠出金は廃止

現行の高齢者医療制度は72歳以上(07年10月までに75歳に引き上げ)が対象。1割(高所得者2割)の窓口負担を除き、給付費は公費で5割を負担し、残り5割には企業の健康保険組合など各保険運営者からの拠出金を充てています。

【65歳~74歳の財源改革案】
退職後は全員が国民健康保険に加入し、自己負担と保険料、被用者保険による財政負担で賄う。

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May 20, 2005

休職(無給)の場合、社会保険料は?

標準報酬月額を決定する方法の一つに、報酬に著しい増減があった場合に標準報酬月額を変更する「随時改定」という制度があります。

●「著しい増減」とは、以下の3条件すべてが必要です。
1.基本給等の固定的賃金の変動があり、
2.継続した3ヶ月の報酬の支払基礎日数が20日以上あり
3.標準報酬等級が従前の等級と比較して2等級以上の高低を生じた場合

●病気欠勤等により標準報酬月額が2等級以上下がったとしても、随時改定は行われず、休職前の標準報酬月額がそのまま適用されます。

【理由】
1.保険料を支払うことにより被保険者資格を継続させ、治療を受けることができるようにするため。
2.徴収額を減額できないのは傷病手当金等の保険給付を受ける際、被保険者の平常の生活を基準にしているため。

したがって、被保険者が休職期間中無給であっても、被保険者である以上給与の支払いの有無にかかわらず今までどおり納入義務があります。

●無給のため賃金から控除できない場合
事業主が被保険者に対して保険料に相当する額の支払いを求めるか、事業主が一時的に立替払いをするなど支払方法を相談した上で保険料を納付することになります。

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