うつ病の労災申請は可能?
従来は、過労による精神障害や自殺については、明確な基準がなかったため、申請しても、労災と認定されない場合が多かったのですが、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平11.9.14基発第544号)が発表され、認定基準が定められました。
●「指針」によると、業務上外の判断要件は
①精神障害を起こしていた
②発病前の半年間に業務による強いストレス(心理的負荷)があった
③業務以外のストレスや個人的な事情で精神障害を発病したとは認められない(精神障害やアルコール依存症の既往症がないなど)の3点です。
そして、これらのいずれにも該当する精神障害は業務上の疾病として扱われることになりました。
業務によるストレスの強度の評価に当たっては、ストレスの原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について総合的に検討することとされ、そのための指標として、31のチェック項目から成る「職場における心理的負荷評価表」に定められました。
●「評価表」に掲げられたのは
1.大きな病気や怪我をした
2.悲惨な事故や災害を体験した
3.交通事故を起こした
4.労災の発生に直接関与した
5.重大な仕事上のミスをした
6.事故の責任を問われた
7.ノルマ未達成
8.新規事業や再建担当になった
9.顧客とトラブルがあった
10.仕事内容・量の大きな変化があった
11.勤務・拘束時間が長時間化した
12.勤務形態に変化があった
13.仕事のペース、活動に変化があった
14.職場のOA化が進んだ
15.退職を強要された
16.出向した
17.左遷された
18.不利益扱いを受けた
19.転勤した
20.配置転換があった
21.自分の昇格・昇進があった
22.部下が減った
23.部下が増えた
24.セクハラを受けた
25.上司とトラブルがあった
26.同僚とトラブルがあった
27.部下とトラブルがあった
28.理解者が異動した
29.上司が変わった
30.昇進で先を越された
31.同僚の昇進・昇格があった
の31項目です。
そして、これらの項目をストレスの強度を3段階で評価し、それらが精神障害を発病させるおそれのある程度のものであったかどうか判断します。
ところで、企業には職場環境の安全を図る義務、いわゆる安全(健康)配慮義務があり、民法第415条は、企業側に義務違反がある場合には損害賠償責任を負うこととしています。特に最近では業務による心理的負担を原因とした精神障害がクローズアップされており、その結果として自殺に至った場合の企業の健康配慮義務違反、損害賠償責任を認める判決も増えています。
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