心と体

October 19, 2005

うつ病の労災申請は可能?

従来は、過労による精神障害や自殺については、明確な基準がなかったため、申請しても、労災と認定されない場合が多かったのですが、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平11.9.14基発第544号)が発表され、認定基準が定められました。

●「指針」によると、業務上外の判断要件は

①精神障害を起こしていた
②発病前の半年間に業務による強いストレス(心理的負荷)があった
③業務以外のストレスや個人的な事情で精神障害を発病したとは認められない(精神障害やアルコール依存症の既往症がないなど)の3点です。

そして、これらのいずれにも該当する精神障害は業務上の疾病として扱われることになりました。

業務によるストレスの強度の評価に当たっては、ストレスの原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について総合的に検討することとされ、そのための指標として、31のチェック項目から成る「職場における心理的負荷評価表」に定められました。

●「評価表」に掲げられたのは

1.大きな病気や怪我をした
2.悲惨な事故や災害を体験した
3.交通事故を起こした
4.労災の発生に直接関与した
5.重大な仕事上のミスをした
6.事故の責任を問われた
7.ノルマ未達成
8.新規事業や再建担当になった
9.顧客とトラブルがあった
10.仕事内容・量の大きな変化があった
11.勤務・拘束時間が長時間化した
12.勤務形態に変化があった
13.仕事のペース、活動に変化があった
14.職場のOA化が進んだ
15.退職を強要された
16.出向した
17.左遷された
18.不利益扱いを受けた
19.転勤した
20.配置転換があった
21.自分の昇格・昇進があった
22.部下が減った
23.部下が増えた
24.セクハラを受けた
25.上司とトラブルがあった
26.同僚とトラブルがあった
27.部下とトラブルがあった
28.理解者が異動した
29.上司が変わった
30.昇進で先を越された
31.同僚の昇進・昇格があった
の31項目です。

そして、これらの項目をストレスの強度を3段階で評価し、それらが精神障害を発病させるおそれのある程度のものであったかどうか判断します。

精神障害の業務起因性の判断のフローチャート

ところで、企業には職場環境の安全を図る義務、いわゆる安全(健康)配慮義務があり、民法第415条は、企業側に義務違反がある場合には損害賠償責任を負うこととしています。特に最近では業務による心理的負担を原因とした精神障害がクローズアップされており、その結果として自殺に至った場合の企業の健康配慮義務違反、損害賠償責任を認める判決も増えています。

| | TrackBack (1)

October 08, 2005

「EAP」って何?

最近の人事労務管理で注目されているキーワードのひとつとして「EAP」があります。EAPとは「Employee Assistance Program」の略称であり、「従業員援助(支援)プログラム」と訳されています。

メンタルヘルスやカウンセリング、心の病による休職者の復職支援など、働く人の業務パフォーマンス向上を目的とした援助活動のことです。

【EAPの定義】

生産性の問題を抱える業務組織や、業績に影響を与える可能性のある、従業員自身の個人的な問題を解決するためにデザインされたプログラムのこと。

●ここでいう個人的な問題とは

・健康問題
・結婚問題や家庭問題、介護問題など
・職場の人間関係に関する悩みなど
・飲酒や麻薬問題など
・法律や金銭問題など
・感情やストレスに関する問題など
・その他個人的な出来事など

もともとEAPは、1940年代にアメリカの主要企業において始まった「企業内アルコール問題」の対策活動を出発点としています。

アルコール依存症や薬物依存症問題が、企業経営に損害を与えるようになったため、その対策として考えられたプログラムが、EAPなのです。

| | TrackBack (0)

October 06, 2005

メンタルヘルス・マネジメント検定試験

過労やパワハラなど、仕事上のストレスが原因と見られる“自殺”は年々増加傾向にあります。

うつ病発症などの深刻な事態になる前に大切なのが、予防と早期発見です。

こうした時代の要請を受けて登場したのが「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」です。

人事スタッフや管理職をはじめ一般社員までを対象とした初の「心の健康」に関する試験であり、メンタルヘルス対策の活動領域と目的・対処によって以下の3コースが予定されています。

●1種(マスターコース)
・対象:人事労務担当者・管理者・経営者
・目的:社内のメンタルヘルス対策の推進
・概要:自社の人事戦略・方針を踏まえたメンタルヘルス対策の
    企画・立案・実施をするための能力を評価

●2種(ラインケアコース)
・対象:管理職・管理監督者
・目的:部門内、上司による部下のメンタルヘルス対策の推進
・概要:安全配慮義務に則っとり部下のメンタルヘルスケアを
    行なう能力を評価

●3種(セルフケアコース)
・対象:一般社員および新入社員
・目的:組織における従業員自らのメンタルヘルス対策の推進
・概要:自らのストレスの状況・状態を把握し、不調を早期発見
    する能力を評価

団体特別試験は2006年2月、公開試験は2006年7月に全国主要都市でスタートする予定。

| | TrackBack (0)

August 30, 2005

増えるマウス症候群

パソコンを長時間使う人の間で「マウス症候群」と呼ばれる症状が増えているといいます。手や肩の痛みやしびれから始まり、悪化すると全身の不調につながるといいます。

とくに女性に多く、マウスを長時間使っていることが原因と考えられることから、その名がつけられたといいます。

【具体的な症状】

(1)手首が痛みで動かない
(2)背屈できなくなる
(3)手首が重くだるい
(4)指先がしびれる
(5)握力低下
(6)ひじの痛み
(7)ひじの関節可動範囲がせばまる
                             など。

さらに、「腕が上がりにくい」「腕を耳に着くまで上げることができない」などの症状も起こります。

パソコン使用に伴う体の障害は古くから知られており、代表的なのは、キーパンチャーなどに多発した「頸肩腕(けいけんわん)障害」です。

マウス症候群から始まって、本格的な頸肩腕障害になるという可能性もありそうですから気をつけましょう。

マウス症候群では、長時間のパソコン連続使用と姿勢の悪さが一番の敵といいます。頻繁に休憩をとり、ストレッチなどで体をほぐすようにすれば、症状は緩和できます。

【最悪の姿勢】
右手でマウスを持ちながら、左肩と頭で受話器をはさむ姿勢だそうです。

| | TrackBack (0)

July 13, 2005

ストレスコントロール

ストレスというと、私たちはすぐに周りの環境や対人関係のせいだと思いがちですが、実際のストレス要因の多くは、自分の性格からくるものだということをつい見失いがちです。

まず、自分を知ることからストレスコントロールは始まります。避けて通れない現代社会のストレスと、いかに上手につき合っていくかのポイントは、あれやこれやと解消法を追いかけることだけではなく、自分のあり方を見つめ直してストレス状態になりにくい自分に変わることです。

【ストレスコントロール10ヶ条】
第1条・・・ 完璧主義をすてる
第2条・・・ 現実を直視する
第3条・・・ 自分なりのストレス尺度を持つ
第4条・・・ 心から打ち込める趣味を持つ
第5条・・・ つらくなったら悲鳴をあげる
第6条・・・ 悩みを打ち明けられる心の友を持つ
第7条・・・ 軽い運動でいい汗をかく
第8条・・・ 先入観を持って人と接しない
第9条・・・ 解決を先に延ばさない
第10条・・・ 「ノー」という勇気を持つ

詳細はコチラ↓
http://www.pref.nagasaki.jp/fukuri/soudan/soudan04.html

| | TrackBack (0)

July 08, 2005

責任感の強い会社人間は要注意!!

「昇進うつ病」って聞いたことありますか?
せっかく昇進したのに新しい職場環境になじめなかったり、過度の重責感によって、うつ状態に落ち込んでしまうケースが多々ありますが、これが「昇進うつ病」というものです。

「昇進うつ病」は、ストレスにさらされる現代人なら、誰でも陥る可能性がある病気ですが、特に注意が必要なのは中間管理職です。中間管理職の場合、昇進したはいいが、思ったように成績が上がらず、上司と部下の板挟みになって1人で苦しむケースが多いためです。

「昇進うつ病」になりやすい人は、仕事一筋の会社人間であることが多いようです。特に責任感の強い人ほど会社の期待に応えようと必死になり、思ったように成績が上がらないと自責の念にかられて、うつ状態に陥るといいます。

こういうタイプの人は、「職場は生活のために収入を得る場所」と割り切って、家族の団らんやスポーツ、趣味などを楽しむ生活に変えていくことが大切と思われます。

仕事はあくまでも自分のためにするもの。昇進したからといって力を入れすぎると後が続きません。

前にも書きましたが、「3あ主義」でいきましょう!!

ただ、「管理職よりヒラ…都職員、昇任試験にソッポ」なんてニュースもあり、「別に出世したくない」「管理職に魅力を感じない」と、“ヒラ”を選ぶ職員が増えています。こちらも問題です。

| | TrackBack (1)

June 06, 2005

過労死のメカニズム

NHK夜7時半からの「クローズアップ現代」で過労死のメカニズムについて放送していました。

人は、なぜ過労死するほど働き続けてしまうのか。その謎が、最先端の脳科学によって解き明かされようとしています。

番組によると、脳の中にある「疲れの見張り番」の存在がポイントだといいます。この「見張り番」は両目の奥、前頭葉の下辺りにあります。

疲れてくると「見張り番」にセロトニンが増えて“休め”の指示を出しますが、疲れすぎて「見張り番」自体が疲れてくるとセロトニンが減ってきて指示が出せなくなります。

そのため疲れを感じなくなり、脳がオーバーヒート状態になってしまいます。このままの状態(過労状態)が続きますと過労死ということになるそうです。

また、過労死を防ぐための研究として、主観でしか把握できなかった疲れの度合いを、人体に寄生するヘルペスウィルス6型を利用して客観的に計測できるといいます。

過労状態になると、人体に寄生しているヘルペスウィルス6型が人体から出ようとするため、口の中に移動してきます。唾液検査によってウィルスの数が増えていれば、過労状態ということになります。

今では、過労状態を察知できる試みも進んでいるのです。

| | TrackBack (0)

June 03, 2005

部下の変化を見つけるポイント

働く人々の中にメンタルな問題を抱えている人が増えています。厚生労働省(当時は労働省)も平成12年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定しました。

●対策として
 1.セルフケア
 2.仕事上のラインによるケア
 3.産業医など事業所内専門スタッフによるケア
 の3つが挙げられています。

特に重要な対策は、ライン上にある上司が部下の異常に気づいてあげること。

●上司が部下の変化として着目すべきポイント
 3つのA 「欠勤(Absence)」
       「事故(Accident)」
       「酒(Alcohol)」

●さらに具体的な観察ポイント。

1・不自然な遅刻・欠勤が目立つとき。
  ひどく元気をなくしていたり、
  逆に怒りっぽくなっていたりといった変化。

2.注意力が散漫で小さなミスを繰り返す、
  慣れた仕事で大失敗をするなど仕事上での変化が見られる。

3.私生活での問題行動が目にあまるとき。
  特に過度の飲酒やギャンブル、
  多額の借金等の問題は注意が必要。

●以上のような変化が見られた場合の上司のすべき行動。

まず部下に声を掛ける。
そして、徐々に時間をかけて、ゆっくり話を聴きだしていく。

ふだんと違うかどうかは、いつもの部下を知っていないとダメ。
できるだけ身近に接しておけば、早く異常に気づく。

| | TrackBack (0)

May 07, 2005

「五月病」にならないために!

ゴールデンウィークを過ぎるころになると、新入社員の間では、五月病の症状が出てくる場合があります。スタート月である4月を緊張の中で終え、その反動で今度は心に隙間が空き、いろいろなことを過度に考え過ぎてしまうことに要因があるとされます。

●新しい環境への適応がうまくいかずに発症

「五月病」は正式な医学用語ではありませんが、世間的には精神的な適応障害としてよく知られています。

社会人においては、5月くらいまで新組織への配属による仕事の引継ぎや研修などに時間がとられることが多く、6月になって症状が出てくることもあり、「六月病」と呼ばれることもあるそうです。

環境の変化幅が大きければ大きいほど、五月病に対するリスクは大きくなるわけで、そういった意味では新入社員、転職者、転勤者などがかかりやすいといえます。

五月病の症状を訴える人の多くは、過度に自分のことや将来について考え込んでしまいがちです。

【たとえば】
・新しい環境でやっていけるのか?
・自分の選択は間違った方向だったのではないか?
・未来が見えない。
・仕事がうまくはかどらない。自分は無能なのか?
・新しい人間関係がうまくいきそうにない。
・前の環境でおとなしくしていればよかった。
・次の目標が見当たらない。

などのことで気分が塞いでしまうようなことがあれば、要注意です!

●「楽観」「大きな想い」が一番の良薬

五月病は、結局「気の病」です。生真面目で、心配性の人ほど、この病にかかりやすいわけですが、一番の予防薬、治療薬は、やはり「気」によるところが大きいといえます。

まず第一に「楽観的」に構えること。

日々の気構えとして、「どうにかなるさ」という不安定なあいまいさを自分の中に受け入れる寛容性を持つこと。

そして、「夢」や「志」などを抱くことが最も効果的な処方箋です。

| | TrackBack (0)

March 13, 2005

積極的傾聴

昨日の埼玉県社会保険労務士会「専門業務自主研究発表会」において紹介された「積極的傾聴」についてお話します。

「メンタルヘルス」の発表の中で紹介されました。
その意味はというと、「相手の考えや気持ちを相手の立場にたって理解する聴き方で、それにより相手が自分自身を理解し、自信ある行動がとれるよう助力する聴き方」のことです。

つまりは全面的に相手を認める基本姿勢ということでしょうか。

●その方法は
 ・相手の言わんとする意味全体を聴く
 ・相手の言葉以外の表現を聴き、気持ちに応える
 ・批判的、忠告的、説教的態度はさける
 ・感情の高ぶりはさける
 ・理解のためのフィードバックを行う。

●傾聴のための条件は次の3つ
 ・誠実さ
 ・受容の心
 ・共感的理解

●傾聴のための練習はどうする?
 ・自己抑制と相手を信頼する態度をとる
 ・相手に充分な関心をもつ態度をとる
 ・相手の話に集中するようにする
 ・相手のクセにとらわれないようにする
 ・相手の話が理解できない時は、率直にきいてみる

「積極的傾聴」は「メンタルヘルス」は勿論のこと、「高齢者の看護」や「カウンセリング」、「面接」などにも有効です。

相手の「言葉を聞く」のではなく、相手の「心を聴く」のです。

| | TrackBack (0)

より以前の記事一覧