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November 2005

November 24, 2005

欠勤控除の計算方法と端数処理

欠勤控除の端数処理は、切り捨てを基本としてください。切り上げますと、欠勤でない時間の分まで控除してしまうことになり、ノーワーク・ノーペイの原則から外れてしまいます。

【欠勤控除の計算時の矛盾】

1か月平均所定勤務時間を用いて欠勤控除を行うと、おかしな事態になることがあります。

1年を通じての1か月平均所定勤務時間が167.3時間だとした場合、仮にある月の所定勤務時間が平均よりも短くて、160時間だったとします。 この月に、全休してしまった従業員がもしもいますと、欠勤時間は160時間です。

欠勤控除額を計算してみましょう

欠勤控除額=(20万円÷167.3)×160時間
=191,273円(円未満切捨て)

月額給与が20万円ですから、欠勤控除額の191,273円を差し引いても、8,727円の残りが出てしまいます。
全休だから、何も支給しなくても問題ないはずなのに、8,727円支給しなければならないというおかしな事態になってしまいます。

こうした矛盾を解決する計算方法としてはいくつか考えられますが、ひとつだけご紹介いたしましょう。

その方法は「一定以上の欠勤をした場合には控除するのではなく日割り計算とする」のです。

たとえば、月の所定勤務日数の半分以上欠勤があった場合は、欠勤控除を行わないで、月額給与を日割計算または時間割計算で支給する、というのも解決策のひとつです。

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November 23, 2005

1か月の所定労働時間数と端数処理

割増賃金の計算基礎となる「1か月の所定労働時間数」を算出する方法はどのようにすれば良いのでしょうか?

月における所定労働時間数は、1年間における1月平均所定労働時間数から求める(施行規則第19条)とありますので、算出式は((365-年間所定休日日数)÷12)×1日の所定労働時間数となります。

【例えば】
1日7.5時間労働で年間の合計休日が105日の場合
((365-105)/12)×7.5=162.49999
端数は切り捨て処理。この場合、162時間又は162.4時間となります。

1日8時間労働で年間休日が114日の場合
((365-114)/12)×8=167.33333
端数は切り捨て処理。この場合、167時間又は167.3時間となります。

端数処理の原則は、「労働者が不利にならないように」ですから、この場合は切り捨てになります。

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November 15, 2005

有給休暇、時間単位で取得可能に?

14日の日経新聞によると、厚生労働省は最低取得単位が原則1日とされている年次有給休暇制度について、時間単位で取得できるようにする検討に入ったといいます。

厳しい雇用環境を背景に有給休暇の取得率が落ち込んでいたが、厚労省は取得単位を細かくして同制度を活用しやすくする。2007年の通常国会で関連法を改正し、早ければ08年にも新基準を導入したい考え。

厚労省が有給休暇制度の改定に着手するのは、過去数年の同休暇の取得率低下が背景。雇用環境の悪化がその理由とみられており、同省の調査によると、有給休暇取得率は03年までの10年間で9ポイント近く下落した。

時間単位の取得は、雇用形態の多様化にも対応しやすいほか、女性の就労を促す効果もあるとしていますが、問題点(副作用)もあります。

【問題点】
時間単位の取得を強制すると、1日単位での休暇が取りにくくなる可能性が出る。

【国家公務員では】
1日単位だけでなく時間ごとの有給休暇取得も可能。
厚労省も公務員に適用されている現行制度を念頭においている。

【年次有給休暇取得率】
平成7 年には取得率が55.2%だったのが、平成15 年には47.4%に減少しています。取得日数でみても平成7 年に9.5 日取得していたのに、平成15 年には8.5 日と減少しています。

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November 12, 2005

「民法と労働基準法」考え方の差

【民法536条2項】
債権者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ債務者ハ反対給付ヲ受クル権利ヲ失ハス 但自己ノ債務ヲ免レタルニ因リテ利益ヲ得タルトキハ之ヲ債権者ニ償還スルコトヲ要ス

【労働基準法第26条】
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

民法536条2項の考え方によれば、使用者の都合による休業に対し、労働者は賃金全額の請求権をもつことになります。

労務の提供が不可能となった場合、労働者は賃金を受ける権利を失いますが、それが使用者の責任ならば、賃金全額に相当する反対給付を請求できるということが規定されています。

労働基準法が平均賃金の6割補償であるのに対し、民法は全額ですから、一見すると労働基準法の方が弱いように思われます。

しかし

◎「使用者の責に帰すべき事由(帰責事由)」の範囲が違います

【民法の場合】
使用者の故意・過失、または信義則上これと同一視すべき事由と解されています。

【労働基準法の場合】
民法よりも広い概念であって、経営・管理上の障害による事由を含めて使用者の責に帰すべき事由に該当するとされています。

<例1>
親会社の経営難のため資材・資金の確保が困難となり休業した場合、民法では使用者の帰責事由になりませんが、労働基準法では帰責事由に含まれます。

【休業中にアルバイトで得た賃金はどうなるか】

労使協定で、休業中に他で働いて得た収入を休業手当から控除する取り決めがあっても、平均賃金の100分の60の部分は控除できません。

平均賃金の100分の60を超える部分については、アルバイトによる収入に応じて減額することもできます。

<例2> 平均賃金10,000円として
休業手当として6,000円支払われた場合は控除できません。休業手当として8,500円支払われた場合は2,500円までの範囲で減額可能です。

民法第536条第2項但書は「自己ノ債務ヲ免レタルニ因リテ利益ヲ得タルトキハ之ヲ債務者ニ償還スルコトヲ要ス」と規定しています。

民法の立場に立てば、アルバイト収入は返還し、反対給付として給料全額相当を受けることになります。これでは、アルバイト収入が100分の40以上になると、会社側にとって有利です。

<例3> 平均賃金10,000円として(民法の立場)

(1)アルバイト収入が2,000円の場合
 2,000円返還し10,000円受けますので、差し引き8,000円の収入になります。(会社は8,000負担)

(2)アルバイト収入が4,000円の場合
 4,000円返還し10,000円受けますので、差し引き6,000円の収入になります。(会社は6,000負担)

(3)アルバイト収入が5,000円の場合
 5,000円返還し10,000円受けますので、差し引き5,000円の収入になります。(会社は5,000負担)

つまり、アルバイト収入が4,000円を超えると会社負担は休業手当(6,000円)より少なくなり会社が有利になります。

民法第536条第2項と違って、労働基準法第26条は、休業手当部分(平均賃金の100分の60)の減額を認めていませんから、使用者がアルバイト収入を休業手当から控除することは許されないという考え方が確立します。

<例4> <例3>を労基法の立場で計算すると(休業手当6,000円として)

(1)の場合の収入は2,000円+6,000円=8,000円
(2)の場合の収入は4,000円+6,000円=10,000円
(3)の場合の収入は5,000円+6,000円=11,000円

平均賃金の100分の60を超える部分については減額が可能です。

<例5> 休業手当8,500円とすると2,500円まで減額可能

(1)の場合は2,000円+8,500円-2,000円=8,500円
(2)の場合は4,000円+8,500円-2,500円=10,000円
(3)の場合は5,000円+8,500円-2,500円=11,000円

となります。

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November 09, 2005

個人情報保護法「過剰反応」目立つ

国民生活センターは7日、個人情報保護法が施行された今年4月から9月末までに同センターや全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数が3200件を超えたと発表しました。

医療機関などの「過剰反応」で困難な立場に置かれたという苦情や、「しつこい勧誘を同法で止められないのか」などと法律に期待を抱きすぎている相談が目立つといいます。

【相談例】
ある60歳代の男性は駅のエスカレーターで転倒した人の巻き添えになり、入院。転倒の原因となった人と入院費用の負担などについて話し合いたいと思い、鉄道会社に連絡先を尋ねたが「個人情報保護のため」と連絡先を教えてもらえなかった。

ある女性は入院中の父親への病名告知を望んでいないのに、病院側は「検査結果について他の医療機関に見解を求めるため、同法にそって本人の同意がいる。告知が必要」と主張している。

【まとめと課題】
「過剰反応」に際し明確な解釈基準や、提供の必要性等についての理解が求められます。

これまで社会に定着してきた名簿や連絡網等、あるいは緊急医療等における個人情報の提供が形式的な法律の解釈や運用の下で存在できなくなったり、不可能になることは、個人情報保護法の本来の趣旨にそったものとは言えない。

法律違反となるリスクを負うよりも個人情報の提供を一切行なわないという対応や、十分な検討や工夫を講じないまま個人情報保護法を理由に従来の活動を止めてしまうという対応が一般化している傾向がある。

法律やガイドラインを形式的に遵守しているからよいと個人情報の保護に対し機械的に対応するのではなく、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する」との法の目的を達成するためには、事業者自らによる積極的な取組みが一層求められます。

http://www.kokusen.go.jp/cgi-bin/byteserver.pl/pdf/n-20051107_2.pdf

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November 08, 2005

電子政府の利用進まず

本日の日経新聞によると、電子政府の利用が進んでいないことがわかります。

【記事内容】
インターネットを通じて役所への申請手続きなどを済ませる電子政府計画で、各種の給付申請をはじめ主要な行政手続きの8割でネットからの利用率が1%に満たないことがわかった。ネット申請の後に郵送手続きが必要であるなど使い勝手が悪いためだ。

政府は2001年度に電子政府の実現に着手。現在ネットで申請できる手続きは約1万3000種類ある。このうち書類申請などの利用が年間10万件超となる主要手続きとして内閣官房のIT担当室が利用件数などを調べているのは166ある。

IT担当室によると04年度にネットからの利用がゼロだった手続きは166の約4割の60。利用率1%未満は134で8割を超す。残る2割の手続きの利用率も低い。ネット申請が全体の半分超という手続きは16種類しかなかった。

●主因は手続きの煩雑さ
電子申請といいながら証明書を郵送しなければならない。
本人確認に必要な電子証明書の取得に数千円かかる。

●公務員の削減
中央省庁は電子化と引き換えに人減らしに踏み切ろうとの意欲が乏しい。

●利用率が1%に満たないネット申請(厚生労働省)
sisei

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November 07, 2005

高齢者の活用方法

公的年金の支給開始年齢の引き上げに呼応して高齢者雇用安定法が改正されますことはご存知のことと思います。

●来年4月以降、企業は段階的に
(1)65歳までの定年の引き上げ
(2)65歳までの継続雇用制度の導入
(3)定年の廃止
のいずれかの措置を講ずる必要があります。

本格的な少子高齢化社会に突入し、2007年問題(2007年以降、団塊の世代が60歳に到達し始める)への対応は企業にとっても死活問題です。

65歳までの雇用延長策について、企業は上記(1)~(3)のうち、どの選択肢を検討しているのでしょうか?

東京商工会議所が今年春に実施した調査によれば、過半数の企業が「継続雇用の導入」の選択を検討していることがわかります。一方、「決めていない」とする企業も全体の1/3を超えています。

制度導入が義務化される来年4月を間近に控え、未だ対応を決めかねている企業にとっては早急に方針を明確化する必要があります。

●アンケート調査結果
1.定年の廃止            18社 2.7%
2.定年の引上げ           64社 9.7%
3.継続雇用制度の導入
 (希望者全員を対象とする)  106社 16.0%
4.継続雇用制度の導入
 (対象者の基準を定める)   248社 37.4%
5.決めていない          227社 34.2%

http://www.tokyo-cci.or.jp/kaito/chosa/2005/170606.html

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November 04, 2005

年次有給休暇の買い上げ

年次有給休暇を買い上げて休暇を与えないことは、「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図る」という年次有給休暇の目的に反します。

●原則として、年次有給休暇を買い上げることはできません。

しかし、買い上げを禁止しているのは、労働基準法に基づいて付与する年次有給休暇のことですから、それ以外の場合には買い上げることも可能です。

●以下の場合には、「買い上げ」が可能なものとされています。

【法定日数分を超える部分の休暇日数】
労働基準法の定める付与日数を上回る年次有給休暇については、就業規則、労働協約、労働契約等の定めにより付与したものですので、その日数については、就業規則等で、買い上げる旨の規定を設けても、違法とはなりません。

【時効によって消滅した休暇日数】
労働者が年次有給休暇を請求しなかった場合、2年でその権利は消滅します。したがって、時効で消滅した年次有給休暇を恩恵的に買い上げることは違反にはなりません。ただし、あらかじめ「買い上げる」ことを就業規則等に定めることは、禁止されていますので注意してください。

【退職・解雇により消滅した日数】
退職や解雇によって退職する者の年次有給休暇が、退職日に未取得のまま残っている場合には、その残りの日数を買い上げても必ずしも違法とはなりません。年次有給休暇は、本来労働すべき日に労働義務を免除するものですから、退職後にはその権利を行使する余地がなくなるからです。

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November 02, 2005

笑い療法士

1週間ほど前の朝日新聞に「病気は笑いで吹き飛ばせ 「笑い療法士」49人誕生」という記事がありましたが、面白い資格の誕生ですね。

自己紹介で「笑い療法士の○○です」と言って場を盛り上げることができたら楽しいでしょうね。

【記事概略】
医療や福祉の現場に笑いを広げて自然治癒力を高めようと、「癒しの環境研究会」が設けた「笑い療法士」の第1回認定授与式が23日、日本医大であった。全国から約150人の応募があり、心理学や脳の仕組みなどの講義を2日間受けた49人が認定された。

職種は医師や看護師ら医療関係者だけでなく、サラリーマン、主婦、教諭らさまざま。30秒ほどの自己紹介でも、巧みな話術で会場を笑いの渦に巻き込んだ。
今回の認定は有効期間3年の3級。今後の活動ぶりを評価して更新されるほか、2級、1級も認定していく。

【笑いは健康に良い】
・吉本興業の漫才を聞くと血糖値が下がるという研究もあります。
・動物の中で人間だけが笑うことが出来る。

笑うということは健康にもコミュニケーションにも役立ちますから、笑いのある職場は雰囲気も明るくなります。そんな会社は業績も上がること間違いなしです。

今後の動向に注目したいです。

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November 01, 2005

労働時間多く年収少ないアニメーター

読売新聞によると、芸団協が5年ごとに行っている調査で今回初めてアニメーターを対象に加え、307人に調査票を配布、83人が回答したそうです。

【労働時間は】
1日平均10・2時間で、月間労働時間は推計250時間。

【平均年収は】
100万円未満が26・8%
100万円以上200万円未満が19・6%
200万円以上300万円未満が18・6%
3人に2人は300万円未満。

中でも、原画を基に絵の動きを描く「動画担当」のアニメーターは出来高払いが8割を占め、1枚あたりの報酬は平均186・9円。年収は100万円未満が73・7%を占めているといいます。

仕事については78・4%が「プライドを持っている」と答えましたが、報酬については49・5%が「納得のいく額ではない」と回答しています。

失業補償や年金についても9割近くが「十分でない」と答えています。待遇改善が急務ですね。

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