6月3日の日経新聞「経済教室」に大変興味深い記事が掲載されていました。講読されている方はご存知だと思いますが、「労働時間規制 -適用除外に拡大必要-」と題した記事です。
【労働時間の管理は現実的には無理】
この記事は、小嶌典明大阪大学教授が書かれたものですが、冒頭の部分で引き込まれました。以下に引用します。
「在社時間を示すものでしかない始業・終業時刻の記録から労働時間を計ることには無理があり、こうした記録さえ持たない行政が民間企業にだけ、その確認・記録を求めることは問題である。労働時間規制の対象範囲を見直し、時間にとらわれない働き方を可能にする必要がある。」
「労働時間ではなく在社時間」同感です!
記事を元に、もう少し詳しく説明しましょう。
いつ仕事を始め、いつ仕事を終えたのか。使用者には労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することにより、労働時間を適正に管理する責務があるとしています。(厚生労働省2001年4月6日付通達)
同通達ではその方法についても、「使用者自ら現認」または「タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を基礎とする」を原則とし、いわゆる「労働者の自己申告」については、必要に応じて実態調査を行うなど、厳格な要件を満たすことが必要としています。
しかし、こうして把握できるのは労働者が会社にいた時間、つまり在社時間にすぎず、ホワイトカラーの場合には会社にいた時間がすなわち労働時間であるとはいえないことは明らかです。ホワイトカラーの場合は、自己申告によらなければそもそも「実際の労働時間」を把握することが難しいという現実があります。
厚生労働省ではタイムカードは使われていません。機械的に登庁及び退庁の時刻を記録するタイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないことから、勤務時間管理の手法としてタイムカードの導入は必要でなく、それを行わなくても特段の支障はない、としています。
国家公務員の場合、出・退勤時刻、すなわち労働日ごとの始業・終業時刻に関する記録が明確な形では存在しません。これはホワイトカラー労働の特徴を直視したものともいえますが、行政が民間企業に求めているものとの隔たりはあまりにも大きく、こうしたダブルスタンダード(民間企業には、公務員とは異なる基準)を適用することへの明確な説明責任を果たさずに民間企業の納得を得ることはおよそ不可能です。
こうしたなか、日本でも、米国の事例をモデルとして、一定の要件を満たすホワイトカラー労働者を労働時間規制の対象から除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれる制度の導入に向けた検討が本格化しつつあります。
その具体的な検討にあたってはまず、新しい適用除外制度においては、対象となる労働者の範囲に現行裁量労働制の対象業務に従事する者を含めるほか、その範囲の決定を労使協定に委ねることが望ましいという点です。
ただしその場合も、肉体労働や定型的業務に従事する者を法令や指針などであらかじめ対象労働者の範囲から除外したり、労使協定により対象労働者の範囲に新たに含める者については、一定の年収要件を課すというような選択肢も十分検討に値します。
さらに、裁量労働制から適用除外制度への移行を円滑に進めるためには、従前と同様、対象労働者の健康確保などの観点から、健康に配慮する措置を講ずるよう労使協定で定めることを制度導入の要件として課すことも必要です。
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